曹洞宗のお寺には標題の石碑がお寺の入口に多く見られます。秦野市内には曹洞宗のお寺が31ケ寺ありますがこのような石碑が設置されているお寺は22ケ寺です。
標題の読みは「くんしゅさんもんにはいるをゆるさず」です
この意味はネギやニラ、ニンニク、ノビルの5葷と生臭い肉や魚を食べ、酒を飲み心乱れている者は修行道場(寺)に入る事は許さないという事のようです。
この石碑を調べていると月舟作と刻まれた石碑が数多くある事に気づきました。
秦野市と近隣の市町村のお寺について調べたところ表1に示す寺院に月舟作の石碑があり
ました。
月舟とは江戸時代前期の曹洞宗の僧、月舟宗胡禅師と思われます。月舟禅師は肥前国出身で寛文11年(1671年)金沢大乗寺26世となり、曹洞宗の復古運動の先駆けとして活躍さた僧侶として評価されています。月舟禅師は元禄9年(1696年)に入寂されていますが表1に示す石碑で最も古い大雄山最乗寺の石碑(写真1)は月舟禅師没後43年後に設置されています。写真では石碑表面にコケのようなものが付着して文字の判別はできません。矢倉沢の江月院に至っては125年後です。写真2は八沢宗淵寺の石碑ですが91年後です。このように揮毫した人が亡くなって何十年も経過してしてから石碑に刻まれるのは極めてめずらしい事ではないでしょうか。当時の曹洞宗の僧侶が月舟禅師になみなみならぬ敬意を持って月舟書の石碑を建立された証ではないかと思います。歴史おこし会の皆様に当該寺院を訪れて石碑を直接見ていただきたく、紹介する次第です

参考文献
註1: 西相模の碑文を探る 筆者 平賀康雄 平成23年11月1日発行

写真1 最乗寺(南足柄市)

写真2 宗淵寺(秦野市)

表1 月舟書の結界石リスト

西暦和暦山号寺名所在地
1739元文4大雄山最乗寺南足柄市大雄町22
1786天明6大育山蔵林寺秦野市堀山下1153
1787天明7天澤山宗淵寺秦野市八沢971
1801享和元福聚山円通寺秦野市寺山780
1813文化10両澤山保福寺南足柄市内山1959
1821文政4牛頭山江月院南足柄市矢倉沢1381
満谷山正應寺小田原市府川339
廣澤山盛翁寺山北町山北2305

註:秦野市石造物調査報告書ではこれらの石碑を結界石と分類している

参考文献

  1. 秦野市石造物調査報告書(1~4)秦野市教育委員会(1992年)発行

  2. 南足柄市石造物調査報告書(1~7)南足柄市教育委員会発行
  3. 山北の石造物(山北町文化財調査報告書)平成8年発行